ラグビーW杯日本大会南アフリカ戦
後半、日本はノーチャンスだった。
だから、わりと静かに見ていた。
ノーサイドになって、力の差がはっきりしてしまったからか、あんまりガッカリしなかったけど、しばらくしてから泣けてきた。
1995年オールブラックスとやって、17vs145で負けた。もう、見ていられなかった。
日本代表は酷評された。
大差で負けたことを酷評されたわけじゃない。オールブラックスは全力で闘った。
一方、日本は心が折れ、ゲームを投げたという評価で、それを酷評されたんだよね。
私たちがそれを酷評するのはフェアじゃないと思いつつ、観客なんか勝手なもので、ひどくガッカリした。平尾、薫田、ラトウ、吉田義、堀越、吉田、元木。大学ラグビー出身のスター選手が揃って居ながら、ほぼ控えのオールブラックスとやって歴史的大惨敗。
あれをキッカケにラグビー人気は彼方に行っちゃった。
この1995年大会、優勝したのはアパルトヘイトによる制裁が解けて、秘密のベールを脱ぎ、初めて世界が目の当たりにした伝説のチーム、強くてしなやかなスプリングボクスだった。
決勝でオールブラックスを破って初出場初優勝、スプリングボクスのジャージーを着たネルソン・マンデラがピナール主将にエリスカップを渡したシーンは、アパルトヘイトを過去にする象徴として、世界中が感動し、賞賛をした。
あれから24年後、多様性を備えた日本代表は、予選を全勝で通過した。これは日本スポーツ史上最大の快挙だった。
そして、W杯初の決勝トーナメントで対戦したのは、あのスプリングボクスだった。
このゲーム、負けられないのはスプリングボクスの方だった。前回まさかの敗戦でスポーツ史上最大最高のジャイアントキリングを献上、W杯2大会連続で日本に負けることなど許されるはずがない。
しかし、前半は、本気のスプリングボクスがシンビンで1人少なくなり、そこを突いた日本が、華麗なラグビーで押し込み3-5。ラグビーの質で日本が上回るというありえない展開。
スプリングボクスはミスが多かった。
勝たねばならないプレッシャーに加え、日本代表の素晴らしいプレッシャーによるものだったことは間違いない。
ハーフタイム、テレビの映像にスプリングボクスのロッカールームが映し出されていた。
皆、座って落ち着いて静かに淡々とHCの指示を聞いていた。焦ってもおかしくないのに異様に静かにみえた。
後半、これはマズイ展開になるのでは?と思った。
案の定、効果的に選手を変えつつ、スプリングボクスが、本気で日本の嫌なところを、徹底的に、ラインアウト、ラックサイド、モールをゴリゴリゴリゴリやってきた、淡々と強烈に。見ているこちらが目を背けたくなるぐらい。
テレビ越しに静かな殺気を感じた。
でも、日本代表は諦めなかった。力の差はやっている選手がよくわかっているはず。
でも、諦めなかった。
止むを得ずペナルティを重ねる度に点差が開いていき、しかも痛む選手が続出する中、心が折れてもおかしくなかった。
でも、心は折れず、タックルを仕掛け、攻撃を仕掛け、最後の最後までトライを狙いにいった。
そうさせたのは、国を背負いリスペクトする気持ちと、過酷なハードワークとチームワーク、そして応援する皆さんの声援があったからだと思う。
やっぱり、ラグビーは面白いっすね。
日本代表チームと関係者のみなさん、ありがとうございました。本当に良い姿を見させてもらいました。4勝1敗、2大会連続のグッドルーザー!実に素晴らしい闘いでした。感動しました。
ここからはラグビー最高峰のゲームを純粋に楽しみにましょう。
個人的に。
本大会これまでのベストトライは、スコットランド戦、稲垣選手のトライ。これは、間違いないと確信してます。